ラスト プリンス
「……でも、僕は、耕太を好きになること、オススメしないな」
あたしの顔を見ずに、耕太のデスクをじっと見ながらそう呟いたカイさん。
その横顔が、今までに見たことないくらいの無表情に近いもので、背筋がぞわっとした。
「………どう、して……」
振り絞った声は震えていて、自分でも視線が泳いでいるのが分かるほど。
「梨海ちゃんは、耕太の何を知ってる?」
「………え?」
「謎や知らないことが多すぎる人間だとは思わない?」
確かに、あたしが知ってる耕太のことなんて、たかが知れてる。
でも。 それでも良いと思ってしまうのは、惚れた弱みっていうものなのかな?
それに、あたしの方だっていくらか(って言ったって片手で数え切れるくらい)謎はあると思うの。