ラスト プリンス


「……でも、僕は、耕太を好きになること、オススメしないな」

 あたしの顔を見ずに、耕太のデスクをじっと見ながらそう呟いたカイさん。

 その横顔が、今までに見たことないくらいの無表情に近いもので、背筋がぞわっとした。

「………どう、して……」

 振り絞った声は震えていて、自分でも視線が泳いでいるのが分かるほど。

「梨海ちゃんは、耕太の何を知ってる?」

「………え?」

「謎や知らないことが多すぎる人間だとは思わない?」

 確かに、あたしが知ってる耕太のことなんて、たかが知れてる。

 でも。 それでも良いと思ってしまうのは、惚れた弱みっていうものなのかな?

 それに、あたしの方だっていくらか(って言ったって片手で数え切れるくらい)謎はあると思うの。


< 187 / 269 >

この作品をシェア

pagetop