ラスト プリンス


 だいたい、あたしの自由はあと2ヶ月しかないんだし、その間で出来ることなんて限られてる。

「とりあえず、髪の毛どうにかしましょうか」

 髪の毛に指を通す耕太は、大人の色香っていう武器を晒す。

 そんなんでコロッとオチないんだからっ。

 耕太はドレッサーに置いてあったブラシを使い、丁寧に髪の毛をとかす。

 あたしの悪い癖なんだけど、髪の毛を弄られると眠くなるのよね。

 ほとんど巻きがとれた髪の毛を巻き直し始めた耕太を、鏡越しに見る。

 ヘアアイロンの熱と、かすかに揺れる髪の毛にうとうとしてきたあたしは。

「起きて下さい。出来ましたよ」

「ん。……あ、寝ちゃった!」

「本当に迷惑な人ですね」

「ごめんって……えっ!?」

 ホントに。テレビのタレントやモデルのヘアスタイルみたいな、適度のゆるさに触りたくなるようなふわふわ感。

 自分で巻いたら絶対出来ないような巻き髪に、開いた口が塞がらない。


< 19 / 269 >

この作品をシェア

pagetop