ラスト プリンス
大好きな人にさよならを
昨日は何も食べられなかった、なんて思いながら、いつのまにか重くなった社長室のドアを押した。
社長室にはソファーに座る耕太ひとり。
何かの資料に目を通してるみたいだけど、それが終わったのかそのプリントを目の前のテーブルに投げた。
「………ん?今日は早いな。 カイならあと30分くらいだけど」
いつもと同じ声音に、ドキリと胸が跳ねる。
あたしから連絡するまで、カイさんはここへは来ないの。 だって昨日ちゃんと話したから。
バイトを辞めることも、その理由も。 あと、耕太が好きなことも、全部。
だから、あたしがやらなくちゃならないことは、耕太へ想いを告げるだけ。
それだけのこと、なのに……。
いざとなったら、緊張やら恐怖やらでガチガチで、まともに口を開くことさえ、声を出すことさえ出来ない。
………好き、なのにっ。
………伝えたいのにっ。
もう、すでに泣きそうになっているあたしは、唇を噛みしめて必死に耐える。