ラスト プリンス

　思えば、１ヶ月弱の短い期間だったのよね。

　あたしが真司を振らなければ、こうやってＢＥＬＬでバイトもしなかっただろうし、ましてや、耕太を好きになることさえ、なかったと思う。

　きっと、あの時真司としっかり話し合っていれば、別れなかったし、耕太とも出会うことはなかった。

　でも。あたしの勘違いで真司には迷惑をかけてしまったけれど、耕太に出会えて良かったと、感じるの。

　だって、あたし、分かったんだもの。

　誰かを好きになることは、苦しくて、でも甘くて温かくて、その人を思うだけで幸せになれるだけじゃないって。

　“好き”っていう気持ちがどんどん膨らんでって、その“好き”が怖い。

　今までに感じたことない気持ちだから、怖くて、怖くて、でも、その恐怖よりも、好きって気持ちが勝ってる。

　それが、“愛してる”ってことなのかな？

　今日までたくさんの愛してるを囁かれたり囁いたりしてきたけど。

　どれも形だけで中身なんてなかった。

　だから、“愛してる”より“好き”って言われるほうが、ずっと嬉しかった。