ラスト プリンス
「………っ」
せめて視線だけでも、と思い目を閉じて、唇を噛み締める。
何か言いだしそうなあたしを待ってくれているのか、耕太は何一つ喋らない。
何を考えているんだろう、と思ってゆっくりと瞼を持ち上げれば、かちりと視線がはまった。
もう、チャンスも時間もない。
静かに深呼吸を繰り返し、震える右手で耕太の頬を触れる。
思ってたとおり、キメ細やかでどうしてひげがないのか不思議なくらい、綺麗な肌。
これからのことを考えるだけで、不安や悲しみで胸にじわっと何かが広がるけど。
今は。 今だけは。
最後の恋に思い焦がれる“少女”でいさせて下さい……。
「……あのね、耕太……」
聞こえるかどうか分からないようなあたしの小さな声はあなたに届く?
「―――好き」
あたしの人生で二回目の告白は、白旗を上げると共に、幕を開けた。