ラスト プリンス
「さあな」
答えが見つからない俺にとって、返事を曖昧にするほかなかった。
「もし、耕太が梨海ちゃんのこと好きなら、オジサン『良いこと』教えてあげようと思ってたんだけど。 全然気にならないもんねぇ?」
…………こいつ、いつかぶっ飛ばして殺る。
どっかの悪ガキのような笑みを浮かべるカイは、梨海の味方なのか、俺の味方なのか、分からない。
ぎっとカイを睨めば、おどけたように肩を竦める。
「仕方ないからさっきの質問に答えてあげる」
「さっきの?」
「梨海ちゃん家――七瀬家は華道家。
母親は主に、昼下がりがお暇なマダム達相手に生花教室とか開いてて、パーティーとかのでっかい花のヤツあるじゃん。あれを手掛けてる。 で、父親は梨海ちゃんが通う私立英明高校の校長。 ちなみに、理事長は梨海ちゃんのお爺ちゃん」
華道家………。
なら、あの言葉遣いや気の張り方も分からなくはないな。
「それで?」
「梨海ちゃんに兄弟はいない。っていうことは、必然的に梨海ちゃんがってことになるよね」
そこで。 カイは不意に言葉を強くした。
「まあ、好きじゃないんだもんね。 止める必要もないか、梨海ちゃんの結婚」
……………。