ラスト プリンス


 は? は? は?
 まじで話の意図が分かんねぇ。

 こいつ、俺をからかってるだけか? なら、いっぺん逝かしてやる。

 ………でも。

 カイがペラペラとその高級料亭らしきとこの店の名前を言ってるのが、やけに耳に残る。

 ちくしょう……。

 俺より、俺のことが分かるって何なんだよ、こいつは。

「社長、今から、有給で」

 背広を掴んで俺は。

 社長室を飛び出し、勢いよく階段を駆け降り、車に飛び乗った。

 どうしても、梨海がムカつく。

 何も言わずに、ただ、自分の気持ちだけを俺に押しつけたまま、他の男を生涯支えようと思ってる、あのバカ、が。

 畜生、と。イライラは募るばかり。

 車が信号に捕まったとき、携帯を開きメモリから梨海を探そうと躍起になる。

「……知らねぇんだった」

 いくら探してもないはずだ。

 あいつに携帯番号を教えたことも、教えてもらったこともないんだから。

 盛大にため息をつく。

 バカみてえ。 あんな子猿のために必死になるなんて。

 でも。 仕方ねぇだろ。

 賭けが引き分けになりそうなんだから。


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