ラスト プリンス

 自分の息子に見合う女、とは思われていないはず。だって、年齢からして適齢じゃないもの。

 ふっと、あちらのお母様はあたしの後ろへと視線を移した。

「……きれいなお花ですこと」

 振り返らなくても分かる。だって、あれは――

「実は。後ろに飾らせていただいたお花、私が生けたものです」

「あら。やはり、才能が違いますわ」

 ありがとうございます、と柔らかく微笑むのは、果たしてホンモノなのだろうか。

 褒められたことはもちろん、嬉しい。

 和を感じさせる竹籠に、勿忘草と小花を扇状に優しく柔らかいイメージで生けたもの。

 勿忘草の花言葉、それは――

「才能だなんて。まだまだですわ。 こういう場には、もっと華やかな……そうね、カトレアなんかがいいのに。紅と白を使えば、新春らしくなりますしね」

「カトレア? どういうお花ですの?」

「洋蘭の女王と呼ばれるくらい、美しい花なんですけどね。 花びらが5枚で――」

 出来ることなら、叫びながらこの場を飛び出して、逃げたいくらい。

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