ラスト プリンス
視線をすぐに彼に戻し、じっと見つめてみるけれど、人当たりのよさそうな微笑みしか分からない。
隣の様子を伺えば、両親同士で会話が弾んでいて、彼の言葉は聞こえていないみたい。
再び、彼へ視線を遣れば、何故か、あたしにしか分からないように小さく頷く。
こいつは何を考えてるんだ。
そうぐるぐると言葉が頭を回るけど、納得出来るような答えは――あった。
……ただ単に、妻となるあたしと二人きりで話がしたい、から?
なかなかあたしが首を縦に振らないのを見てか、声を出さずに口を動かした。
!!
あたしの間違えがなければ彼の口は『ワスレナグサ』と。
あたしの反応を見てなのか、今度は満足そうに笑む彼は、立ち上がってあたしに手を差し出した。
さっき、あたしは花の名前なんて言ってない。 知ってるってことは………。
上目遣いであたしは彼を見据え、ふわりと笑ってやった。 ほら、色を重ねたあたしを見せる時が来たんだもの。
差し出された手に手を重ね、着物がはだけぬ様に立ち上がった。