ラスト プリンス
「返せよ。 てか、人のポッケからパクってんじゃねぇよ」
「イヤよ。 だいたいパクってないもの。 ポッケから頭を出してたこれを引っ張って、あなたに見せびらかしてるだけじゃない」
さらに盛大なため息を零す彼は、ズボンのポケットから煙草を取り出しくわえた。
ちらり、と数十分前にいた部屋を見やった彼は、再びため息をついて煙草をしまう。
「イライラしてるなら吸えばいいじゃない」
「!!」
白い棒をしまった箱をポトリと落とした彼はあんぐりと口を開ける。
「あははっ! なに、その顔!」
「!!!」
しまいには「うわあ、もう最悪」と呟いてその場にしゃがむ彼は頭を掻き毟る。
なによ、サイテイな男ね。
この花を返さないからって、そんなに落ち込むことないじゃない!
「……返すから、立ち上がってよ」
「人に好青年ぶってるとか言っといて、あんただって猫かぶってんじゃん」
「残念だけど、地味な方が素だから」
「そう。 ……花、ね。どうせ聞くんだろ」
彼は、自分の手に渡った青い花に視線を落とし、ポツリポツリと話し始めた。