ラスト プリンス
膨らむ気持ちと一抹の不安


 ◇◇◇

 車を走らせて約30分。

 目的の高級料亭は、確かに高そうな雰囲気を醸し出している。

 もう縁談の話は済んでしまっただろうか。 一抹の不安を抱えながらも、そんな縁談なんか関係ない、と自分に言い聞かせる。

 とりあえず、梨海の兄とかなんとか言ってれば、中には入れるとは思うが。

 ここが七瀬家御用達の店だとしたら、すぐにバレるよな。

 全面玉砂利で“けんけんぱ”よろしく平たく無駄に磨かれた石の上を進む。

 両脇はかぐや姫もびっくりなミニサイズの竹がスパコン斜めに切り落とされ綺麗に並んでいる。

 そのミニサイズの竹の裏には、ちょろちょろとエコなんだか風流なんだか分かんないくらいの水が、これまた斜めに切り落とされたミニ竹から流れて池に注いでいる。

 ………息苦しいったらありゃしねえ。

 引き戸を開けようと手を伸ばせば、そこには縦一列横数十列に並ぶ、ガッサガサの竹たち。

 スパコン斜めに切り落とされた竹は青々としていて若かったけど、こっちは粗方おじいだな。

 はあ、とため息をひとつ。

 ガラガラと軽そうで意外と年季の入った音が、俺の心拍数を上げた。

< 222 / 269 >

この作品をシェア

pagetop