ラスト プリンス
いつ終わるんだよ、この痴話げ――
『あんたなんかと結婚するか!!』
同時に言い放った言葉は、腹を抱えて笑いたくなるほどデカイ声。
それに、怒鳴り合う理由がカエルっていうのも、笑える。
とりあえず、梨海の結婚はなくなったのか、と安心した俺は、店の外に出て、梨海が出てくるのを待った。
しばらくすると、梨海が店から出てきた……のはいいけど、何故男と一緒?
梨海と男は互いに小さな紙切れを交換し合ってる。
「………おい」
男もだけど梨海の行動が癪だ。
ご丁寧にも梨海は肩をピクリとさせ、俺を見てあからさまに驚いて、視線を泳がせる。
「……何やってんのよ」
久しぶりに会って、第一声がそれかよ、と言いたかった。
なのに、梨海の声は思ってた以上に震えていて、今すぐにでも、この腕で抱きしめたい。
梨海に何か言われたらしい男は、軽い足並みでこの場を去っていく。
「乗れば」
躊躇う梨海を余所に、腕を引っ張り後部座席に投げ入れた。
………悔しいけど。
あの立食パーティーで見たのは紛れもない、お前だ。