ラスト プリンス

 淡い黄色の着物を見事に着こなし、艶のある黒髪を上品にアップしている姿。

 いつもは茶色い髪の毛は、黒染でもしたのだろう。 髪の毛が、黒でも茶色でも似合うのは、そのはっきりとした顔立ちからなのか。 まったく違和感がない。

 バックミラーで何度も、梨海の様子を伺ってみるものの、俯いていて表情が分からない。

 その代わり。ぎゅっと手を握っている。

 細かく肩が震えているのは、俺の気のせいじゃない、はずだけど、俺の所為、か……?

「……梨海」

「…………」

 鏡越しで、梨海の肩がぴくりと震えた。
 途端、ポツリと淡い黄色の着物に雫が落ちる。

「梨海」

「………こう、たぁ……」

 いきなり。ぐんっと前に飛び出した梨海は、どっかの女優みたいにポロポロと涙を零している。

「なんだよ、お前」

「……うえっ、ぐ……ひっ」

 嗚咽の混じる泣き声は車内に響きわたる。

「うるせぇな。お前はガキか」

「……だってぇっ」

 ずずっと鼻水をすする梨海は、一通り泣いたのか、ゆっくりと元の位置に戻った。

 それから、さっきとは打って変わって静かに涙を零し、流れる景色に視線をやる。


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