ラスト プリンス
一瞬たりとも躊躇わずにお店の中に入っていく。
制服で来たことを後悔するほど、昨日とは打って変わって大人な雰囲気が漂っている。
たぶん、昨日には感じられなかった控えめに流れる洋楽の所為だと思う。
昨日は、ドレスばかりに目がいってしまい、周りなんて見てなかったけど。
内装は洋風で、確か外装も洋館ぽかった気がする。
「七瀬さん。また来てくれたの?」
「あ、村上さん。こんにちは」
昨日とは違うスーツを纏っている村上さんは、やっぱり笑顔が素敵。
ふわりと、砂糖を煮詰めた様な濃縮させた甘さ。
甘すぎるっていうのが少しネックなのよね。
「やっぱり、高校生だったんだ」
「はい。高1なんです」
「そっか。それで、今日は何の用かな」
「村上さんにお願いがあって……」
そう。
今日は、耕太に用があったわけではなく、村上さんに会いに来たの。
だって、ここの社長だって言ってたし、ことをトントン拍子に進めるには手っ取り早いじゃない?
話が長くなるけとを感じ取ったのか、村上さんは「こっちきて」と。
昨日とは違った、これまた洋風で高そうなソファーが合い向かいに二つ、置いてある家具は茶色で統一してある部屋に踏み入れた。