ラスト プリンス


 一瞬たりとも躊躇わずにお店の中に入っていく。

 制服で来たことを後悔するほど、昨日とは打って変わって大人な雰囲気が漂っている。

 たぶん、昨日には感じられなかった控えめに流れる洋楽の所為だと思う。

 昨日は、ドレスばかりに目がいってしまい、周りなんて見てなかったけど。

 内装は洋風で、確か外装も洋館ぽかった気がする。

「七瀬さん。また来てくれたの?」

「あ、村上さん。こんにちは」

 昨日とは違うスーツを纏っている村上さんは、やっぱり笑顔が素敵。

 ふわりと、砂糖を煮詰めた様な濃縮させた甘さ。

 甘すぎるっていうのが少しネックなのよね。

「やっぱり、高校生だったんだ」

「はい。高1なんです」

「そっか。それで、今日は何の用かな」

「村上さんにお願いがあって……」

 そう。

 今日は、耕太に用があったわけではなく、村上さんに会いに来たの。

 だって、ここの社長だって言ってたし、ことをトントン拍子に進めるには手っ取り早いじゃない?

 話が長くなるけとを感じ取ったのか、村上さんは「こっちきて」と。

 昨日とは違った、これまた洋風で高そうなソファーが合い向かいに二つ、置いてある家具は茶色で統一してある部屋に踏み入れた。


< 23 / 269 >

この作品をシェア

pagetop