ラスト プリンス
「……このスウェットって誰の?」
「あ? 『さくら』か『ひなた』どっちかのだろ」
「え……な、なに。二股?!」
「ちげーよ。 片割れのどっちかっていう意味」
………片割れ?
ええっと、双子のお兄ちゃんなんだっけ?
「双子だっけ? 妹? 弟?」
「妹。 ………てかさ――」
ピィィィイと鋭い音が響き渡る。
直後、カチャンと軽い音が聞こえ鋭い音が止まった。
はあ、とため息をつきながらキッチンからあたしの近くまで寄り、がっとおもいきりあたしの顎を掴んだ。
「っ!? ……こう――っ」
驚いて耕太の胸を押すものの、素早く腰に手を回されて、引き寄せられる。
あたしは必死に腰から上を反らせてキョリを取った。
「わ、忘れ物は? 何か取りに来たんでしょっ!?」
そう。 車に投げ込まれたあたしはてっきりそのままBELLに行くものだと思ってた。
いくら日曜日でもカイさんと耕太は仕事をしてるはずだから。 きっと、仕事を抜け出して可哀想なアルバイトを迎えに来ただけ。
だから、あたしを連れて仕事に戻ると思ってたのに。