ラスト プリンス

 期待させては突き落とし、また期待させては突き落とす、の繰り返し。

 ………あたしにどうしろっていうの。

 もう分かんない。 分かんないよ……。

「………りみ?」

 あたしの耳から離れた耕太はあたしの顔を見て、一瞬眉を寄せた。

 それから、耕太の大きな手のひらが伸びてきて、あたしの頬を撫でる。

「泣くほど嬉しかったか?」

 許せなかった。 どうしても。

 あたしの気持ちを分かってる上でこうやって、その気持ちを手軽く扱われるのが。

「脱がしたかったら脱がせばいいじゃない!! 興味なんてないくせにっ」

 どんっと両手で耕太の胸を押して、離れようとする。だけど、相変わらず耕太の手が腰に回っていて離れられない。

「離してっ。 もう嫌なの! 耕太といるだけで、あたしつらいの!」

 泣き叫ぶあたしは、耕太の腕を掴んで自分から引き離そうと、力を込める。

 もっと、もっと好きになる前に離れなくちゃダメなの。

 欲が出る前に、あなたから離れたい。

 「はあ」と。上からため息が落ちてきた。それはまるで、“呆れた”とか“馬鹿だろ”をたっぷり詰め込んだような、そんなため息。

 だったら離せばいいのに。

< 234 / 269 >

この作品をシェア

pagetop