ラスト プリンス
期待させては突き落とし、また期待させては突き落とす、の繰り返し。
………あたしにどうしろっていうの。
もう分かんない。 分かんないよ……。
「………りみ?」
あたしの耳から離れた耕太はあたしの顔を見て、一瞬眉を寄せた。
それから、耕太の大きな手のひらが伸びてきて、あたしの頬を撫でる。
「泣くほど嬉しかったか?」
許せなかった。 どうしても。
あたしの気持ちを分かってる上でこうやって、その気持ちを手軽く扱われるのが。
「脱がしたかったら脱がせばいいじゃない!! 興味なんてないくせにっ」
どんっと両手で耕太の胸を押して、離れようとする。だけど、相変わらず耕太の手が腰に回っていて離れられない。
「離してっ。 もう嫌なの! 耕太といるだけで、あたしつらいの!」
泣き叫ぶあたしは、耕太の腕を掴んで自分から引き離そうと、力を込める。
もっと、もっと好きになる前に離れなくちゃダメなの。
欲が出る前に、あなたから離れたい。
「はあ」と。上からため息が落ちてきた。それはまるで、“呆れた”とか“馬鹿だろ”をたっぷり詰め込んだような、そんなため息。
だったら離せばいいのに。