ラスト プリンス

「……るから。帰るから! 離して! 知ってる? あたし、もう耕太のこと好きじゃないの。 大き――」

「それ以上言うな」

「なん………ひゃあっ」

 浮遊感がいきなり襲い身を硬くする。

 目を見開いて耕太を見上げれば何食わぬ顔で前を見据え、あたしを見ようともしない。

 あたしを抱き上げ、一言も言葉を発さずに、耕太は右側のドアに入っていく。

 右側のドアの奥は寝室………寝室?!

「ちょっ!! や、やだっ。 耕太!」

 じたばたとどうにかして逃げ出そうとするあたしを冷たい眼で見下ろした。

 ななな何でっ?!冷たすぎません?

 どぉしぃてぇ〜って日韓を拠点としてアジアで活動している韓国出身の男性5人グループが歌いだすよ?! ねえっ、ねぇーっ!!

 っていうか!っていうか! フツーに考えて、こんな展開ありえなくない?!

「ちょっと耕太っ。 聞いてるの?! 降ろしてよ!降ろっ――ぎゃっ」

 支えがなくなったあたしの身体は重力に従い落下していく。

 ボスっ。

 柔らかい感覚にふわりと耕太の香りが鼻を掠める。

 ベッド……?

 人間の反射というものなのか、知らぬ間にぎゅっと瞑っていた目を開ければ、あたしの上に覆い被さる耕太の姿。

 なっ! えっ!! はあっ!!?

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