ラスト プリンス

「慣れてるんじゃねえの?」

「は!?何言ってんのよ! 退いてよっ」

 あたしのこと好きじゃないやつに抱かれてたまるかっ。

 ぎっと下から睨めば、すっと目を細くした耕太にどきりとしてしまった。

 くっ……ちくしょうっ。かっこいいのはズルいわ!!

「誰にでも股開いてるわけじゃないんだから!!」

 男らしい胸板を両手で力一杯押すあたしの手首が熱くなった。

 ふと手首に目をやれば、あたしのそれに痣が出来るんじゃないかってほどの力で掴む耕太の手。

 口の中に鉄の味が広がるのは、唇を噛み締めたから。

 あたしは怖くて耕太が見れず、じっとあたしの手首を掴む耕太の手を見ていた。

 本当に脱がせる気………?

 確かに。耕太のことが好きなあたしは、耕太に抱かれたら嬉しいかもしれないよ?

 でもっ、それは双方の気持ちがあるからこそのことで、お情けで抱かれるなんて、イヤ。

「………やだよ。こう、た……。 怖いから………やめて……?」

 奥歯がガチガチと鳴るくらい、怖い。

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