ラスト プリンス

「はっ!! さては身代金目当てねっ」

 そうだ! それしかない!

 ほら、お決まりのパターン『娘の命が欲しけりゃ、5億用意しな』とかなんでしょーっ。

 確かに、この2LDKの家で一番奥の部屋に連れ込まれたんだもの。

 始めっから、逃げ道をなくしてたってわけね!

 ちくしょうっ。まんまとはめられ――

「ぶはっ!! お前……頭っ。へい、き、かよ……っ。 ぶっ」

 いきなり、お腹を抱えしゃがみこみ、ネイビーの布団をバシバシ叩きながらゲラゲラ笑い始めた耕太。

 笑いすぎてちゃんとしゃべれてないし。

「軟禁とかさらっと言っちゃうような変人と違って、あたしの頭は正常よ!!」

「はあー。ばっかだよなあ。 軟禁なんてするわけねえだろ」

 ひとしきり笑った耕太は、ふーっと息を吐いてから、真剣な面持ちであたしを見据えた。

 それがなんだか、空気までをもぴんっと張り詰めてしまうような、すごく意志のある眼差し。

 少しキョリのあったのを詰めて、ゆっくりとあたしの頬に触れた。

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