ラスト プリンス
「……はい。どっちが先に恋に落ちるかっていう賭けを」
「おお。今流行のフォーリンラブっていうやつかぁ。いいね。
耕太が全然タイプじゃない女の子を好きになるのを見てみたいね」
「あたし、全然タイプじゃないんですね」
「うん。だって昨日、七瀬さんに会った時敬語じゃなかったでしょ?
もしかしたら、お客さんかもしれないのにあんな態度とるくらいだもん。相当、嫌いなタイプだね」
グサグサと胸に刺さって痛いんですけど。
この人、遠慮っていう言葉を絶対知らないわね。
だって、相変わらず微笑みを携えオブラートに包もうとせずに言っちゃうんだもの。
「絶対、あたし勝つもん……」
「なんだか楽しそうだから、採用しちゃおっかな」
「ホントにっ?!」
「うん。七瀬さん、人当たり良さそうだし。そんなに時給良くないけどいいかな?」
「ありがとうございますっ。よろしくお願いします」
立ち上がって頭を下げるあたしに、村上さんはクスクスと笑っている。