ラスト プリンス
隣で盛大にため息をつく耕太は、頭をガシガシ掻きながら眼鏡をかけ、布団をばさりと捲ってベッドから降りた。
「ちょっ……」
慌てて布団を手繰り寄せて体に巻き付けるあたしなんか無視して、さらにそこに立つ双子ちゃんも無視して耕太はリビングに行ってしまう。
ちょっとーっ!置いてかないでよ!
じっとあたしを見つめる四つの瞳は、綺麗に澄んでいる。
「ねえ」と右。
「なに?」とあたし。
「あっ!」と左が声をあげた。
たったったっとベッドの脇に歩み寄った左は、ぴたりと口を開けて立ち止まった。
「さくら?どうしたの?」と右。
………ん?さくら? ってことは……。
「耕太の妹?!」
「だからなに」とたぶんひなたちゃんが冷たく言い放つ。
だからなに、ってねぇ……。
「あたし七瀬梨海。あなたのお兄ちゃんの“彼女”なの。よろしく」
『かっ?!!!』
そこでぴたりと止まっていたさくらちゃんも顔だけこちらに向けて驚いているみたい。
「よ・ろ・し・く」
語尾にウインクでもしちゃおうかしら、なんて思ってるのはこの二人があまりにも美人だから。
あたしだって負けないとは思うわよ?だけど、若さには勝てないじゃない?
だったら、ずる賢さで勝たなきゃねえ。