ラスト プリンス
「よ、よろしくなんてしてあげないんだからっ!」
「そんなこと言わないでよ、ひなたちゃあん。あたし、オネエサンになるのよ?」
「ささささくさくらっ!!こいつ猫女よ!! お兄ちゃんに取り入って騙そうとしてるの、きっと!」
わあわあと喚きながらさくらちゃんの近くに寄るひなたちゃん。
そのひなたちゃんもさくらちゃんの足元を見た瞬間、さくらちゃんと同じような顔で固まった。
「………この猫おんぬぁあああ!!」
「ひ・な・たちゅあん?梨海ちゃんか、梨海お姉さんって呼びなさいよ」
「あんたねぇ、私のスウェット勝手に着ないでよっ」
わなわなと震える手でひなたちゃんが持ち上げたのは、昨日着物から着替えたスウェット。
にやりと口角を上げたあたしは、布団をしっかりと掴んで二人のいるベッドの端まで移動した。
「それ、ひなたちゃんのお兄ちゃんが『着ろ』って言ったの。でね?昨日の夜、“耕太”に脱がされちゃったのよおんっ」
わざと耕太を強調して言ったのはただ単に意地悪したかったんだけど。
カァアアッと顔を赤くした二人がなんだか可愛いくて。
それに、ひなたちゃんみたいなモロツンデレなんて、苛めがいがあるじゃなあい。