ラスト プリンス


 どうしてあんたとっ、と叫ぼうと思った手前で、口の中に独特の苦みと香り。

「っ?!!」

 気付いた時には、喉を通る少し温くなったコーヒー。

 なななな何やってんのよっ!!

 どうして口移しでコーヒー飲まなくちゃいけないのっ。

 口を閉ざそうとしたのに、無理やり舌をねじ込み、あたしの舌さえも絡み取る。

 コトンとマグカップをテーブルに置いたような音を聞いてる間にも、あたしはソファーに押し倒され、深くそして濃厚なキスを強いられた。

 好きでも何でもない男とのキスは、別に初めてじゃない(確かファーストキスは中1の時、告白された見ず知らずの先輩)。

 だからって、あたしから舌を絡めるなんてことするもんですかっ!!

 必死に耕太の胸を押し返すものの、びくともしない。

 っていうか、作戦にしてもやりすぎだと思わないっ?!

 限度っていうものを考えなさいよっ!


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