ラスト プリンス


「……ちょっ!!」

 息を付く間もなく、やっと声を上げたあたしは、さらに強く耕太の胸を叩いた。

「なんだよ」

「なんだよ、じゃ、ないっ……」

 息が上がってるせいか、上手く話せない。

 顔を横に向け左手の甲を唇の上に載せ、ゆっくりと呼吸するあたしは、視線だけを動かし耕太を睨んだ。

「足んない? っていうか、優しい男が好みなわけ?」

「女は誰だって、あんたとは違う、優しい男が好きだと思うけど」

「……俺は、優しくないですか?」

「はあ?口調を変えたところで、根本的な“優しさ”は変わらないっ! あたし、あんたのそういう所、キライ」

 口調が悪いからって、優しくないとは限らないじゃない。

 なのに、こいつは『優しい=敬語』らしく、コロッと口調を変えて優しさを作り上げる。

 そんなの、偽物、よ。


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