ラスト プリンス


「今までの女は、その敬語で作り上げた『偽物の優しさ』でオチたかもしれないわ。 でもねっ! あたしは、そんなものでオチないんだからっ」

 ギッと睨むあたしは、ただこの状況が怖かっただけだったのかもしれない。

 だって、あたしの足の間に耕太の片足があって、ソファーに押し倒されてるなんて。

 しかも、昨日知り合った人なら、なおさら。

「……普通、女子高生って襲われかけたら叫ぶんじゃねぇの? 啖呵切ったら余計あぶねぇだろ」

「叫ぶも何も、口塞いでたのあんたでしょ!?」

「ま、俺にキスされて叫ぶ女なんていねぇけど」

「……はあっ?!」

 目の前にいると思うんですけどっ!!

「っていうか、俺、お前をオトすから。ぜってぇ、賭けに勝ってやる」

 にやり、と。

 さっき、あたしをソファーに放り投げた時と同じような笑みに、背中がぞっとした。

 なんだか、昨日、耕太にときめいたことに後悔したいわ。

 確かに、裏表の激しい奴だとは思っていたけど、まさか、こんなに歪んだ奴だったとは思わなかったもの。

 出来るならば、昨日に戻って、賭けを申し出る所から……。

 いや、もしかしたらアイツと別れる所からやり直した方がいいのかも。


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