ラスト プリンス
『晴れ時々雨』ってきっとあたしのことよっ
少しずつバイトに慣れてきた頃、耕太と一緒に買い物行ってきて、とカイさんが甘い笑みを浮かべた。
もちろん、頷いたあたしは、社長室から出て、耕太を探しに一階に降りる。
相変わらず控えめなスローテンポな洋楽に明るい店内。
カイさんと耕太とあたし以外に、店員さんは5〜8人くらいいるけど、すべて女性。
まあ、ウエディングドレスを扱うお店だしね。
「あの、藤野さんは?」
黒のスーツを着こんだ受付の女性――遠藤さんにそう聞けば。
「藤野さんは、たぶん外で休憩してるんじゃないかな」
遠藤さんは、黒髪ストレートを一つに結っていて、綺麗なお姉さん。
そんな遠藤さんにお礼を言って、外に出たあたしは、駐車場に回る。
「……寒い」
12月の頭にでもなれば寒いよね。
息で両手を温めながら、少しの煙草の匂いを感じ、駐車場の奥へと向かった。