ラスト プリンス


 呆れて小さくため息をつくあたしの頭で2回、何かが跳ねた。

 視線を上に上げると、あたしの頭に伸びる腕があって、頭を撫でられたんだ、と理解するまでに時間がかかった。

「ずいぶんと、柄にもないことしてくれるじゃない」

「分かってるとは思いますけど。 俺はコッチで世間に認識されてますからね」

 そう言った後、分かってるんだろうな、とでも言いたげにあたしの頭をぐしゃぐしゃにする。

 せっかく今日は綺麗に巻けたのにっ、と思って睨み上げれば。

 ふわり、と。 カイさんとは違う、大人っぽい笑みを浮かべる。

 なっなっなっ。
 普段からあんまり笑わないくせに、色気のある微笑みってずるい!

 ばっと下を向いて、唇を噛み締めるあたしの頭上でくつくつと喉の奥を鳴らして笑うのが聞こえるけどっ。

「たまには可愛い反応もするんですね」

 耳を隠していた髪の毛を退かしてまで、耳元で囁くようなことですかっ?!

 頬に熱が帯びるのが、嫌でも自分でも分かって、冷たい両手で包む。


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