ラスト プリンス


「……ごめん。もうちょっとゆっくり歩いてもらってもいい?」

 あたしにとって、結構恥ずかしいのよ?

 こうやって人に頼みごとをするなんてこと、たまに、とか、ときどき、くらいしかやらないから。

「そうですよね、すみません」

 あっ、謝った?!

 あの無愛想で歪んだ俺様が、すな――

「梨海は足が短いですからね。足の長い俺が合わせないと。すっかり、忘れてました」

 どこが素直なんだよっ!!

 一瞬でもそう思ったこと、どうでもいいけど後悔するわっ。

「それより、私服の梨海は久しぶりに見ますね」

 ころりと話題を変えた耕太は、あたしのことをじっと見る。

 パステルピンクのパーカーワンピースに、灰色のニーハイソックス。

 決して、派手でもなく地味すぎることもなく、家からコンビニに行くような、気軽な服装のあたし。

「先週のド派手な格好より、こっちの方が歳相応で似合ってると思いますよ」

「……まあ、そうだけど……」

 先週って、きっと初めて会った日のことよね?

 その日は、あたしがアイツと別れた日……でも、その前に優衣と遊んでたのよね。


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