ラスト プリンス


「何なのよっ。元カレでもやって良いことと悪いことがあるでしょうっ?!」

 今あたしの目の前にいるのは、この前別れたばかりの元カレ。

 声を上げるあたしを見て、にやりと口角を上げ、笑って見せた。

「じゃあ、戻ろうよ」

「はあ? 何言ってんのよ」

「より戻そうよ」

 躊躇うことなくするりと出てきた言葉は、あたしを黙らせた。

「………何で」

 やっと出た声は、振り絞って出したからなのか、震えている。

 ううん。動揺もあると思うの。

「だって、梨海はまだ俺のこと好きなんだろ?」

 ………は?

「いつも別れたら、すぐ誰かと付き合い始める梨海が、俺と別れてから誰とも付き合ってない。ってことは、そういうことだろ」

 こいつが、もっとましなことを言ってれば、あたしだって雰囲気に呑まれてたかもしれない。

「違うわ。あたしはあんたなんて好きじゃない」

「じゃあ、何で今まで以上に告白されてるのに、付き合わないんだよ」

 うっ……。
 なかなか痛い所突いてくるわね。


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