ラスト プリンス


「あんたは梨海に『軽い』なんて言えないですよね? 梨海は決して軽くない。 あんたが他の女と遊んでいた時、梨海はちゃんとお前を見てた。
………てめぇに梨海を貶す資格なんてない」

 ことさら低い声でそう言う耕太は、軽々とあたしを抱き上げた。

 自分で歩けないなんて情けない。
 そう思いつつも、あたしは耕太の肩に顔を埋めるしかない。

「梨海、何か一言ありますか?」

 柄にもない耕太の優しい声色に顔を上げれば、声以上に優しい笑みが広がった。

 ゆっくりと、真司に顔を向けたあたしは。

「こんないい女を逃すなんて、真司先輩も見る目がないですね」

 もうどうでも良かった。

 でも、でうしてもあたしは遊びじゃなかったことが言いたかっただけ。

 何も言わない真司を置いて、お店の中に入っていく耕太は、「まったく」と呟いていた。


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