ラスト プリンス
「………あたし、ね。ちゃんと好きだったのっ。 アイツのことバカみたいに大好きだったのに……っ」
何かが弾け飛び、それを合図にしたかのように、頬を濡らす。
「……っ。……好きだったのは、あたしだけだったなんて……」
あたしが振ったのに、なんだか振られた気分。
「でも、ね。こ、うたが、ああいう風に言ってくれて……嬉しかった」
『あんたが他の女と遊んでいた時、梨海はちゃんとお前を見てた』
知らないはずなのに。
あたしのことなんて、真司と付き合ってたことだって、別れた理由だって。
全然知らないくせに。
ただの当てずっぽうだとしても、本当のことだったから、嬉しかった。
もし、賭けに負けたとしても、こいつを……耕太を好きになって負けるなら、仕方ないって思う。
それがすべて作戦だったとしても。