ラスト プリンス


 もし、高橋さん(この人はウエディングプランナーで、BELLのドレスを使ってくれてる)ならデザインの催促の電話だ。

 カイのデザインは少しずつ人気が出てきて、だんだんと既製のドレスより注文が多くなってきたくらい。

 高橋さんはせっかちなんだよね、がカイの最近の口癖。

「三浦さんのデザイン?……あーっ、ライトイエローのドレス!ちょっと待ってください。
……耕太っ。探して!三浦さんのデザインっ」

 携帯を押さえながら自分のデスクを差すカイ。

 デスクに向かいごちゃごちゃになったデザイン画の中から、三浦さんのライトイエローのドレスを探す。

 それは案外早く見つかって、電話するカイ目の前にひらひらとさせた。

 さあ、どうする、カイ。

「……っ?! えぇっと……あともう少しですねぇ」

「あーあ。俺、知らねぇからな」

 ギッとカイを睨みながら、三浦さんのデザインに目を落とす。

 鉛筆でシルエットしか描いていないこのデザイン画の一番上には〈To Miura〉と。


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