ラスト プリンス
「えっ。明日までにですか? せめて、明後日……はいっ、あともう少しなんですけど……」
口籠もるカイに見兼ねて、カイの耳にあててる携帯を取り上げた。
『いい加減仕事効率っていうのを――』
「もしもし、藤野です」
『……ああ、藤野さんでしたか』
呆れ果てた高橋さんのアルトの声は、ちょうど耳に馴染む。
確か、高橋綾香(たかはしあやか)年齢は32歳くらいだったと思う。
ミディアムの髪の毛をダークブラウンに染めてたような。情報が曖昧なのは、最後に会ったのが春先だったからだ。
「社長が迷惑をかけているようで、すみません」
『本当に困ってます。お願いですから、明日中にデザインをこちらに送ってもらえませんか? 時田の準備もありますから』
「……そうですねぇ。今から明日の昼までのスケジュールを調整すれば、なんとか大丈夫です」
『本当ですかっ?! 助かります』
カイを一瞥すれば、ため息を何度も付き、うなだれている。
「では、ポストに投函次第、また連絡します」
意気消沈したカイに携帯を投げ渡すと、耕太のドSっ、と叫ばれた。