ラスト プリンス


「てめぇが仕事しねぇのが悪ぃんだよ、バーカ」

「だからって明日中は無理だよぉっ」

「高橋さんに『あともう少し』って言ったのはお前だろうが」

 ほぼ真っ白なデザイン画を渡し、自分のデスクの上に置いてあるスケジュール帳を開く。

「宮野入さんと今井さんのは後回し。そのデザインは、昼までに投函。 分かったか?」

「ワタシ ニホンゴ ワカ――」

「それ以上言ったらぶち殺す」

 自分のデスクに座り、顔も上げずにそう伝えれば、カイはぴたりと何も言わなくなり、そそくさとデザインを描き始めた。

 黙って描いてると思ったら、そういえばさ、とカイが口を開いた。

「かっこよくも不細工でもない男と耕太知り合いだったの?」

 抑揚のないその言葉に顔を上げると、デザインを描くカイの姿。

「は?何が」

「さっき、その男が『またお前』って耕太に言ったから」

「それを、何でカイが知ってるんだよ」

 ぱっと顔を上げ、にこりと笑った。

「望遠鏡で修羅場を見てたから」

 と、それが何でもないようにさらりと、しかも爽やかに言ったカイは再び、デザインに取り掛かる。


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