ラスト プリンス


「耕太と梨海ちゃんは後ろ姿しか見えなかったけど、あの男はばっちり見えたからねぇ」

「覗きが趣味だったとはな」

「だって、窓から外を見た耕太が慌てて外に出てくんだもん。気になるじゃん」

 ……ちくしょう。 バレてたか。

「この前買い物行っただろ?その時、あいつ同じバスでさ」

 明らかに不自然だったな、あれは。

 目の前で窓に頭を預ける梨海を、じろじろ見てた。

 最初は、物珍しくて見てるのかと思ったけど、スーパーまで付いて来る。

「さすがにおかしいと思って、声を掛けたら、元カレとかなんとか言っててさ」

「それだけじゃないんでしょ」

「『お兄さん、体の付き合いならお薦めですよ』だとよ」

 一応、同じ仕事場で働いてるっていうのもあって、さすがに頭にきたな。

 女をなんだと思ってるんだ、と言った……ついでに胸ぐらを掴んで。

「ふーん。で、なかなか帰ってこない梨海ちゃんが心配で窓の外見てたんだ」

「んなわけねぇだろ。あれはたまたまだったんだよ」

 換気のために開けてあった窓を閉めるために、窓際に行った。

 ただ、それだけ。

 俺は、梨海をオトせばいいだけで、俺がわざわざオチる必要はない。


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