ラスト プリンス
それは、思った以上の出来だった、っていうのもあったんだけど。
逆に、素っぴんで勝負しない梨海が気になってしょうがない。
「なあ、カイ」
「んー?」
「女ってどうして化粧すると思う?」
「えー、何だろうね。 綺麗に見せたいとか、普段と違う自分になれるとか?」
普段と違う自分になれる……。
もし、梨海がそうだとしたら、普段見てる俺らが見ているのは、素じゃないってことか?
あんなにぎゃあぎゃあ騒いでるのが素じゃない……ってさすがに無理があるよな。
じゃあ、ただ、単純にギャルに憧れてただけ、か。
「……あ。美羽子からメールだ」
ポツリと呟いたカイに目を遣れば、欠伸を噛み締めながら携帯を握っている。
「そういえば、美羽子ちゃんって梨海の高校の教師なんだろ?」
「うん。梨海ちゃんの話をしたら、結構仲が良いみたい。 だから、僕が旦那だって言わないでほしいみたいだよ」
「恥ずかしい、とかそういう理由だろ?」
「まあね。 ………ねぇ、耕太ぁ。ご飯どうする?だってぇ。 帰っていい?」
「7割終わってたらな」
カイを一瞥し黙らせてから、自分のデスクの整理を始める。