檸檬
「あのさ、結花」
「ん?なに、壱」
「ほんとはもっと早くに、渡そうと思ったんだけど・・・・」
ごそごそ、何かを探している様子。
なんだろ・・・・
「ずっと渡したかったんだ」
手のひらに置かれたものは・・・・
いつの日か、壱の左手の薬指に光っていた指輪。
「これ・・・・」
他の人とのペアリングじゃなかったの?
「よかった。ちゃんと号数覚えてて」
その指輪は、私の左手薬指にぴったりとはまって、その存在を主張している
「いつ買いにいったの?」
「去年の夏かな?」
そんなに前から・・・・
「まいったよ。店に入ったら女しかいなくてさ、香水臭くって」
去年の夏・・・・
女物の香水・・・・
そっか、
あれは浮気じゃなかったんだね・・・・
「ごめ・・・・なさい」
いつの間にか溢れ出た涙。
それを見て驚いている壱。
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