緑の魔法使い
魔術師の治療
二日目の夜遅くになって執事の羽鳥さんが戻ってきた。
鼓都さんは既に眠った後なので起さずに置いていたが、羽鳥さんは疲れきったように、でも報告といわんばかりに綾瀬川さんにも出した薬湯を飲みながら、起きた綾瀬川さんと共にその報告を受けた。

「旦那様にはお嬢様がこちらで治療される事に対して了承頂きました。
旦那様もお嬢様の苦しみをずっと見ていたので藁にも縋る思いなのでしょう。
治療の時間が長くなってもかまわないということなので、回復は無理でも是非とも苦しみを和らげて欲しいとの事です。
そして治療費はもちろん生活費も支払いの用意が出来ているので、私の方に要求いただければお支払いできます。
そして例の件ですが、そちらは旦那様がただ今再調査なされてます。
出来れば調査が終わるまでお屋敷の方に戻らない方が賢明かと思いますので、治療より調査が延びた場合は・・・」
「調査がはっきりしない限り家には帰せない。いっその事お嬢様には家に帰らず何処かマンションでも借りて過してもらう方がいいぐらいだけど、当面はここに居てもらった方が治療の面では都合がいいな」
「そうでございますね。お嬢様もこんな短時間で皮膚が裂ける事がなくなったと既に治療の効果が見えてお喜びにございます」
「そ、そんなにも早くですか?」
驚く羽鳥さんに「ええ」と顔を綻ばせながら綾瀬川さんは何度も頷く。
< 26 / 79 >

この作品をシェア

pagetop