緑の魔法使い
若く新しい父はとてもと言う言葉が失礼なくらいの裕福な家柄で、幼い頃から家族の死を目の当たりにしている俺に何かと気を使っていてくれた。
そのひとつがこの生家の保護。
色々思い出もあるだろうからと直せるところは直して再び住む事が出来るようにしてくれた。
そして売りに出されていた物の買い手の付かなかったこの山も再び購入してくれたが・・・不便は相変らずだった。
山水を引き込んだ水瓶をあらい、引き込むパイプを一通り綺麗にする。
苔を落として改めて水を通せば、指先の痺れるような冷たい水に思わず顔を洗わずに入られなかった。

「冷たい」

東京の生温い水道水とは違うカルキ臭さのない生水はどこまでも体にやさしい。
水瓶に頭ごとつっこんで、纏わりつく夏の熱を振り払う。
滴り落ちる水滴が服に沁みていくのも気にせずに、改めて水瓶の水を捨てた。
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