緑の魔法使い
夕方綾瀬川と羽鳥の作る夕食の物音に自然と目が覚めた。
台所の方が賑やかで、その隣の風呂場から頭から水を滴り落としながら橘君が出て来た。

「お帰りなさい」

ここに来てからと言うもの、彼はいつも山で何かをしていた。
雑草を抜いたり、枝を切ったり、この家を中心にいつも何かをしていた。

「目が覚めた?体調は?」

「うん。なんだかすごく体が軽い」

「薬が効いたんだね」

今まで呆れるほどの薬を試してみたが、こんなにも効果があった事は初めてで、自然と顔が緩むのが判る。

「今日はどちらまで?」

嬉しいのが伝わるのが恥かしくて話しを誤魔化すように訊ねれば、

「今日はちょっとアルバイトかな?」

「アルバイト・・・」

この山の中で?

きっと台所に立っている二人も同じ疑問を持っただろう。
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