緑の魔法使い

魔術師の不文律

翌朝、古い家ならではの誰かの足音が響く音で目が覚めた。
隣室で眠り綾瀬川か羽鳥かと思ったけど、階段を降りればそこには橘君が立っていた。
いくつもの瓶を並べてなにやら慎重に秤で測りながら茶色い粉末を取り出しているので、静かに眺めていれば

｢おはよう。今日は早いね?｣

薬を掬う手を止めて私を見た。
夏とはいえ、朝の柔らかな陽光の忍び込む台所で私を見る目は何処か柔らかくて、思わず顔も洗ってなく髪に櫛さえ通してない姿に酷く恥じらいを感じた。

｢おはよう･･･｣

自然に声が小さくなる私を気にせず

｢前のクスリと飲み薬がしっかり効いてるみたいだから今日から体に塗る薬を変えてみようと思ってね｣

大きな瓶に秤で掬った粉末や、乾燥した葉っぱ、よく判らないしわしわのものを入れて、山から引き入れている水をその中に詰める。

｢今度はこれを使うの?｣

粉末が溶け、少し薄茶色をしているが、前の液状なのにベターっとした薬ではなく、化粧水のような水っぽさだ。