緑の魔法使い
初対面は記憶に留めるまでもない凡庸な人だと思っていたのに、治療には根気強く、そして慎重に。ひとつひとつ私の様子を見ながらの薬の調合と、睡眠時間を削ってまでの看病に、今では尊敬すらあって、それを的確な表現で表す事の出来ない私はたぶん、きっと、どうしようもないくらい気になる存在で、今みたいに二人きりで触れてもらったりするのは結構心地良い緊張がある事に気付いてしまった。

治療とはいえちょっと期待してドキドキしてしまうシュチェーションだが、橘君は仕事に忠実だった。
プシュッと、霧状のものが吹き付けられたかと思って思わず顔をそらしてしまった。

「キャッ!!」

思いっきり薬膳料理の臭いを吸い込んでしまって咽てしまう。

「だ、大丈夫?!」

予想外なのか慌てる橘君がうろたえていたけど、

「何とか・・・」

鼻の奥まで薬膳料理だ。
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