【続】俺様王子と秘密の時間
「……美結、朝、アンタに言ったよねぇ?“近づかないで”って」
怒りのこもった声。
闇を映し出すような瞳に、あたしは金縛りにあったかのように瞬きさえ出来なかった。
チャプン……と、また水の音が響く。
ソレはさっきよりずっと近くで聞こえて、ふと目線を落とすと美結ちゃんがバケツを手にしていた。
『何するかわかんないから』
言われた言葉を思い出す。
背中にヒンヤリとしたモノが駆け巡り、激しさを増していく心臓が耳元にあるみたいだった。
バケツを両手で持ち上げた直後。
「舞い上がってんじゃないよっ!頭冷やしな!!」
美結ちゃんにはもう、あたししか見えていなかったみたいだ……。
あたしめがけてバケツを振るう。
バシャッ――!