【続】俺様王子と秘密の時間
打ち付けるような水温……。
はねる水しぶき。
視界が真っ暗になって。
あたしは反射的に瞑った目をゆっくりと開くと、視界に映った光景に唖然としてしまった。
「ち……あき……」
ポタポタ……と水滴が落ちる。
あたしに覆い被さっている千秋の長い前髪の先から、睫毛から。
う、嘘……。
まさか……。
「冷てぇ」
あたしの顔の真上に、千秋の顔があって。
眉をしかめている。
冷静に、驚くこともない口調。
「千秋っ……」
あたしは千秋の背中に腕を回して確認する。
ワイシャツがぐしょ濡れで、千秋の冷たい温度がためらいがちに這わした指先から伝わってきた。
そしてあたしはワイシャツの肩辺りが少し濡れただけだと気づく。
……濡れる眼差しに胸が疼く。
咄嗟に、千秋がかばってくれたんだと……そんな都合の良いことをあたしは思ってしまう。