【続】俺様王子と秘密の時間
「踏ま…ないで……」
食べてもらおうなんてそんな図々しいこと思ってたわけじゃない。
でも少しは期待していたの……。
自惚れていたのかな……。
「踏まないでったら……」
声が擦りきれそうだった。
歯を食いしばって涙がこみあげてくるのを必死でこらえた。
泣かない……。
絶対、泣かないんだ。
「ちっぽけな恋心なんて早く捨てなさいよ?」
もう、ヤメテ……。
お願いだからもうヤメテ。
薄ら笑いを浮かべる美結ちゃんに心臓をぐにゃりと握られたようだった。
「千秋先輩は渡さないからね?」
美結ちゃんがそう言ったその時。
けたたましいくらいのエンジン音が聞こえた。
その音はだんだん近づいてきて、あたしはアスファルトに膝をついたままゆっくり後ろを振り返る。