【続】俺様王子と秘密の時間
あたしはその場に崩れ落ちた。
恐怖に押し潰されそうだった。
精神のタイムリミットは限界で、やっと解放されたというのに震えはちっとも止まらなかったんだ。
夕暮れに吹く風がやけに冷たく頬を撫でた。
「あの性悪女がお前のこと監視してるっつうから、来てよかった」
あたしの隣にしゃがみこむ羽鳥のシトラスの香りがふわりと漂う。
「桜井には気をつけろ」
羽鳥はそう言うとさっき美結ちゃんが爪をたてたあたしの頬を、親指で優しく撫でてくれた……。
「つか、オレが食いたかったよ」
羽鳥はぐちゃぐちゃに踏みにじられたワッフルに目線を落として言った。
「今度はオレにも作ってくれよ。まる焦げでも食べてやるからさ」
羽鳥は、優しい……。
だからまた泣きそうになる……。
羽鳥の無邪気な笑みは凍りついたあたしの心を溶かしてくれるみたいだった。