【続】俺様王子と秘密の時間
思考が回らなかった……。
ぐちゃぐちゃに泥ついた気持ちにあたしはもう立っているのさえ苦痛で、でも、ふらつく足で向かった先は禁断の部屋。
抱いたとか抱いていないとかそういうことは頭の中で掻き消した。
千秋に逢いたくて仕方なくて。
ブラウンの瞳を見つめたくて。
“椎菜”って呼んでほしくて。
そんな想いが溢れたの……。
禁断の部屋の入り口の前で息を潜めて、震えてしまいそうな心を抱えてそっと覗いてみる。
「……っ」
けれど、来てしまったことを酷く後悔した。
夕陽で染まる部屋の中。
パイプ椅子がいくつか倒れてた。
そして、机の上に座りネクタイを結ぶ千秋の姿を見つけた……。
「あれはヤっちまったなぁ」
背後から来た羽鳥の声。
気配に気づき顔を上げる千秋と、視線が重なる寸前にあたしは逃げるようにその場から走り出した。