【続】俺様王子と秘密の時間
そんなあたしの背後からため息が聞こえて、羽鳥はさらに続ける。
「オレはアイツが嫌いだ。でも、あの女とヤッちまうような、そんなバカな男じゃねぇよ……」
最後は聞き取るのが精一杯な程、小さな声だった。
その言葉に驚いたあたしはゆっくりと振り向く。
羽鳥は髪をかきあげると眉を下げてあたしを見据え、大きな手であたしの頭をくしゃりと撫でた。
――羽鳥の手はいつも暖かい。
「あたし……」
あたしはどうして……。
千秋を信じられないんだろう。
あたしがもし彼女だったら、自信持って“千秋はそんな人じゃないから”って、言えたの……?
自分の弱さに嫌気がさす。
こうやって羽鳥の優しさに助けてもらってばかりで、あたしは救いようがないくらいバカだ。
「……き……好きなの……」
それでも、好きなの……。
こんなに、好きなの……。