【続】俺様王子と秘密の時間
長い前髪の隙間から覗くその瞳があんまり優しく映るから、あたしは今すぐ走りだして千秋の胸に飛びこんでしまいたくなった。
数メートルの距離がもどかしい。
こんな状況に置かれていても、抱きしめてほしいと願ってしまう。
千秋は美結ちゃんの側まで来る。
着崩した制服と爽やかなブルーのネクタイが、視界の中で広がる。
「お前、相変わらず屈折してんな?」
低く淡々とした口調とは裏腹に、氷ついてしまいそうな眼差しを美結ちゃんに向けた。
あたしも羽鳥も沈黙する。
でも、当事者である美結ちゃんはこの状況にはそぐわない怪しい笑みで千秋を見上げた。
「思い出しちゃったんだ?」
微笑みを含んだ声。
でも、どこか忌々しく。
「ああ。救いようがねぇくらい、歪んだ女だってことをな」