【続】俺様王子と秘密の時間
「泣き落としもきかないんだね」
反論することを諦めたのか唇を白くなるまで噛みしめて、美結ちゃんはそれ以上何も言わなかった。
大きな瞳が揺れている。
ハチミツ色の髪の毛を揺らして、顔を伏せるように無言で教室を立ち去っていく美結ちゃん。
最後に見た横顔は、幼い女の子のように見えた……。
「気づくのおせぇんだよ」
それまでずっと黙っていた羽鳥は机の上から降りると口を開いた。
「普通、あんな女のこと覚えてねぇよ」
「オレが朝教えてやったから思い出したんだろーが!」
「ああ、そうだよ」
「もっと感謝しろ」
ガキ大将みたいに威張る羽鳥を尻目にため息をつく千秋を、あたしはただひたすらに見つめていた。
「つか、何でお前あの部屋に居たんだよ?もしかして、桜井にシイが呼んでるとか言われてノコノコ行ったのか?だっせぇなー」
ケラケラ笑う羽鳥。